上場した弁護士ドットコムは何がすごいか
知らなかったのだが、弁護士ドットコムが東証マザーズに上場していた。
市場のないところに市場をつくった最近では稀有な例だろう。
※そもそも弁護士界のコスト構造はほぼ人件費で広告費は入り込む余地もなかったようだが、最近は増加する弁護士数に対してニーズが追いついてないイメージ。T
今日は弁護士ドットコムのどこかすごいのか?について考えてみる。
まずは市場規模から。
弁護士市場規模:1兆円
広告:1,500億 (潜在)
└うちインターネット:800~1,000億
弁護士数:30,000人
ポテンシャルという意味でもそこそこ大きい市場。かつ完全に青い海である。
他に競合が見当たらない。潜在市場規模が大きくなればなるほど先行者メリットを享受できる状態であると言える。
では次に弁護士ドットコムのビジネスモデルを見ていく。
基本的にはマッチング(相談-弁護士)であるが、弁護士側の有料課金が存在する。当然有料課金ユーザの方が相談(問い合わせ数)は伸びる。
プランは以下の通り (それぞれ月額)
ライト:2万
スタンダード:3万
プレミアム:5万
これを高いと見るか、安いと見るかであるが、離婚訴訟/交通事故などの一般人でも遭遇する案件の平均が50~60万とすると、月1件でもここから成約すると考えれば割安と言える。むしろもう少し払ってもいいくらいだ。
基本的にこの手のマッチングは専門家側にわかりやすい形でメリットがないとスケールするのが難しい。こないだ記述したBizerしかり。
bizmuchakushoku.hatenablog.com
その点ではこのモデルには文句のつけようがない。
次は集客観点だ。月額2万課金ユーザがどのくらいいるかわからないが、有料弁護士のLTVは年間24万。有料弁護士ユーザは
登録弁護士数は国内弁護士の約5人に1人に相当する6,964名(※2014年8月4日現在)
とあるので、仮に10%が有料率と仮定すると700人となる。
となると弁護士一人獲得CPAは24,000円となる。これをユーザ獲得の原資と按分しながらユーザ獲得を行っているのだろう。
さて、今度は一般ユーザの方だが、これもプレスリリースから660万MAUとのこと。
これまた驚異的な数字。
いったいどのように集客しているのだろうか。こっちのユーザのCPAは有料弁護士のLTVから逆算するのだろうが、登録弁護士によるコンテンツ経由の流入 (つまりほぼオーガニック)が多そう。
また、繰り返しになるが、この領域は青い海なのでオーガニックライバルはYahoo!知恵袋などしか思いつかない。非常に集客効率はいいのだろう。それにしても600万MAUは驚きだが。。。
弁護士サイドのLTVから見る許容CPAは想定しにくいが、どんなもんなのだろう。
最後に事業評価だが、
仮に700人が正解だとして(実際はもっと有料化率は高いだろうが)その700人がすべて2万プランだとしても年間で2億は固い。
かつ600万MAUをほぼ派手なプロモーション抜きでおこなっていることと、有料課金モデルということで利益率も高いと想像される。
潜在市場をとれれば、高利益率を維持しながらの年間売上10億、50億あたりまではすんなりいきそうだ。
今後に注目したい。
蘇ったmixi。次の一手は?
mixi界隈が賑やかである。
少し前のMUSE&Coを17億での買収劇。
モンストの成功により、うなるほど現預金があり一本のゲームによらない事業形態を目指したいのだろう。(2014年12月時点で400億ほどの現預金を保有)
ミューズコーは発表を見る限り
60万を超える会員と2014年3月期の売上が7.96億円。営業損失が3.8億
とのこと。累損ベースがいくらなのかは不明だが、この事業形態だと営業利益はいいところ20%程度と想定され、とても17億のバリュエーションがつくとは思えない。
また本業(ここではSNSのmixi)とのシナジーという観点でも不明である。過去にmixiモールを運営し、大コケしており、ECとの親和性はほとんどないことは証明されている。
経営陣が相当優秀だったのか。事業単体の買収というより、何か次の一手を見据えたものだったのか。
と、ミューズコーでもお腹いっぱいのところに
チケットプラットフォームのフンザを今度は115億で買収。(全株式取得)
なにやら巨大なプラットフォーム構想があるような気がしてならない。
このスライドとともに、人員募集シェア(しかも若手外コン人材)がSNSにあがっていたりするし。次回決算発表を待ちたい。
最後にフンザの業績を見る。
2014年2月の売上は900万。2015年2月は5億の売上に1億の営業利益を見込む
しっかりと伸びている。チケットCtoCでは他にはチケットストリート|簡単・安心のチケット売買があるが、手数料ビジネスだけで営業利益1億はすごい。
何か他のマネタイズ手段を儲けているのだろうか。(有料会員など)
マッチングである程度の規模を出してこの額での買収劇。
いい時代だ、今はほんとに。
Retty10億調達とグルメ関連サービスについて
昨日だが、Rettyが10億円を調達したとのこと。
しかも、この1ヶ月で100万会員増加とのこと。
ぐっと伸びているのを実感している。ユーザーだけでなく、店舗からの認知も上がっている。最近ではテレビCMをやってるサービスなども多いが、我々ははほとんど広告などを使っていない。口コミやSEOでの自然増だぐっと伸びているのを実感している。ユーザーだけでなく、店舗からの認知も上がっている。最近ではテレビCMをやってるサービスなども多いが、我々ははほとんど広告などを使っていない。口コミやSEOでの自然増だ。
とのこと。マス打たずに自然経路で、この規模で伸ばしてくるのはさすがの一言。
プロダクトが評価されているのだろう。実名ということもありレビューの評価の信頼性は非常に高い。(個人的に)
ただこの業界は言わずと知れた「食べログ」「ぐるなび」の2大巨頭がいる。Retty武田さんとしては競合という位置付けではないようだが、ユーザから見る分には十分にこの3社は競合関係だろう。
こうしてみると、改めて食べログのメディア力と収益から見る成長余力を
感じざるを得ない。
カカクコム、500円でランチが食べられる有料サービス「食べログ ワンコインランチサービス」開始:MarkeZine(マーケジン)
こういうサービスもならでは感があり、旬を捉えてるし。
ぐるなびは、もう周囲にほとんど使ってる人いないし、大都市圏の若いユーザはどんどん離れている気が。事業としても営業抱えるコストを内包し続ける構造っぽいし。
成長余力に疑問。
Rettyはぜひ実名ならではのエッジのきいたマネタイズモデルで
驚かせて欲しい。
Lineという事業を世に出せたか?
少し古いが、Lineの2014年2Qの売上は182億とのこと。QonQで25%成長ということで、まずは大台の1,000億が現実的になってきた。
来期には上々するのだろう。
非常に好調な訳だが、Lineが世に出たのは2011年でユーザが1億を超えたのが2013年。
2011年にLine「的」な事業を世に出す勇気があった会社が果たして日本にあったか?という観点で書きたいと思う。
- (サービス開始当初は) LTVはほぼゼロである前提でスタートする覚悟があったか?
- 国内のスマホ比率が20%程度(たしか)の2011年にユーザ獲得が前提のサービスに投資する覚悟があったか?
- 友達が使っている前提のサービスである。一人では楽しめないサービスに投資をする覚悟があったか?
3つほど論点はあるかと思うが、それぞれ見ていこう。
1.LTVがほぼゼロサービスの件
正直無料通話+コミュニケーションツールではユーザからのマネタイズは難しい。
となるとCPIは限りなく抑える必要があり、当然CMなどを打つ勇気はない。
3.とも関わるがユーザが増えないとスケールしない構造のサービスでこれは痛い。
相当の自信があったのだろう。
少なくとも私の会社ではGOサインは出せない。
2.スマホ比率の件
これはでかい。将来的には8~9割がスマホに移行することが見えていたとはいえ、スマホユーザ全部取り込んでも足元だと2,000万ユーザしかいない中でこのサービスにGOサインは出せない。
かつリリース直後の立ち上がり(売上)も見込めないので、なおのこと出せない。
3.友達いる前提
これは相当でかい。
コミュニティサービス全般に言えることだが、相当しんどい。1にも2にも関連するが、ここをブレイクスルーするにはプロダクトがユーザニーズを的確に捉えていること以外に成功要因はない。
・・・結論、私はやっぱり一般人。
すげーよLine。
マッチングビジネスってどうなの。
インターネットが得意な領域として必ずあがるキーワードとして「マッチング」がある。
この領域は大抵がマッチした時の成約手数料で稼いでいくビジネスなのだがそうなると
以下のどちらかに振り切っていないとビジネスとしてはしんどい気がしている。
高単価 (1件あたりの成約金額が高い)
多件数(1件あたりの成約金額は低いが、件数が膨大)
こうなると4象限を描きたくなる。
こんな具合に。
当然右上が一番有望なわけだが、なかなかそこの領域のサービスは存在しない。
ざっと思いつくものをマッピングすると、
ざっと思いつく感じだとこんな感じ。
ジモティーはマッチングでマネタイズしていないため除外。
Airbnbは語り尽くされてる感があるので除外。
現地の人から借りる家・アパート・部屋・バケーションレンタル・民宿予約サイト - Airbnb
単価が高ければ高いほど、成約手数料は高めに設定しても成り立つ。
当然だが、逆も然りで右下はなかなか成約手数料は上げづらい。
と、考えると
cowcamoは1件あたり単価が飛び抜けて高く、モデル的にも40%くらい取ってもいけそう。BtoC領域をCtoCに置き換えたという観点でもそれくらいはいけるはず。
逆Anytimesは・・・いいとこ20%とか、最悪10%とかもありえる。
最近だと駐車場のマッチングのakippaがなんか賞とって調達してましたね。
まぁ、まとめると
よほど高単価なものをマッチングするか (必然的に今までリアルだったものを置き換える形になる)
件数稼ぐか(企業体力が求められる。立ち上がりが遅い)
のどちらかだなと。
個人的にはcawcamoには期待したい。
平均単価数千万だと考えると月間成約件数が5件だったとして、率をminimumでみて10%としても
20,000,000×0.1×5=10,000,000
でいきなり1,000万の売りが立つ計算。ぜひとも頑張っていただきたい。
#あ、bizerをマッピングしたのはちょっと間違えたかも。